価値創造ストーリー

鉄鋼事業責任者メッセージ

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専務取締役 内藤 伸彦

鉄鋼業の大転換期でチャンスをつかむため、電気炉工場新設プロジェクトを推進するとともに、製品ポートフォリオ改革に取り組んでいます。

専務取締役

内藤 伸彦

中山製鋼所グループの強み

一気通貫のバリューチェーンと製品の品質、環境適合性

中山製鋼所グループは、鋼材およびC形鋼・パイプなどのフォーミング製品を生産する中山製鋼所を中心に、商社機能としての中山通商・三星商事、海上・トラック輸送機能を持つ三星海運、鋼板を加工する三泉シヤーといった、川上から川下まで一気通貫でお客様に製品・サービスを提供できるグループ総合力を大きな強みとしています。

本社のある大阪市大正区には、電気炉工場および圧延(薄板・鋼板・棒線)の各工場が集約されており、その他全国9カ所にC形鋼やパイプを生産する工場があります。 中山通商は5事業所1加工センター・倉庫、三星商事では全国27拠点に倉庫を併設した営業所があります。そして、三星海運は海上輸送、トラック輸送の物流ネットワークを全国に保有し、三泉シヤーは中山製鋼所の構内に、切断など、鋼板を加工する設備を持っています。ま た、本社・船町工場には3万トン級の船が接岸できる専用岸壁があり、製品販売輸送と鋼片・スクラップや諸資材の調達に活用しています。鋼材製品は重量物のため船での輸送が適しており、2024年問題で遠方までトラックで運ぶことが難しくなったこともあり、大きな戦力として有効に利用しています。

蓄積したソフト面での強みは、まず、創業100年を超える老舗の鉄鋼メーカーで鉄・ものづくりへのこだわりと誇りを持っており、三星マーク、中山ブランドは国内外のお客様に信頼をいただいていることが挙げられます。中山ファンともいえる長いお付き合いをいただいているお客様も非常に多く、このような基盤をつくっていただいた諸先輩方に感謝しています。加えて新規分野・高付加価値製品を中心に新規のお客様の開拓にも注力しており、実績を上げています。また、社員は真面目で誠実で、人間関係を大切にし、良い意味で家族的な社風があります。過去のトラブル発生時も、皆が一致団結して素早く適切に対応できた結果、影響を最小限にとどめることができました。このことは社員の協調性と会社へのエンゲージメントを表していると思います。

製品面の強みは、一次鋼材だけでなく、鋼材を加工することにより付加価値を高めた製品を生産・販売していることにあります。例えば自社で製造したホットコイルから、二次・三次加工で付加価値を高めたレベラーシート、メッキコイル、またフォーミング製品であるC形鋼やパイプなどの加工製品を拡販することにより、収益性の向上に努めています。その他の製品においても、縞鋼板はニッチな分野の中で高いシェアを持ち、棒鋼・線材製品も多方面のお客様から高い評価をいただいています。

そして、社会やお客様のカーボンニュートラルに貢献する電気炉製品を提供できることも大きなアドバンテージです。当社は2000年代の初めまでは2基の高炉を持ち、高炉製品を生産していた経験から、高炉製品の品質特性をよく理解しており、その上で、高品質の電気炉製品を造り込んでいます。カーボンニュートラルへの対応で電気炉製品を必要とされるお客様のお問い合わせも増えている中、私たちの提案力は、お客様のニーズに十分にお応えできるものと自負しており、電気炉製品の使用分野の拡大を図るべく、品質向上とともに用途の拡大に努めています。また、二次・三次加工製品は自社生産した電気炉のホットコイルを主に素材として使用していることから、トレーサビリティが明確な環境適合製品としてお客様に提供できます。

リスクと機会の認識

鉄鋼業の転換期こそ、電気炉工場新設で収益拡大を図る

当社グループの事業は、地政学、為替、エネルギー価格や物流コストの変動などによって様々なリスクと機会が生じますが、最も直接的な影響を受ける要因は需要の動向です。特に中国の生産動向による影響は大きく、このところの中国の需要低迷により自動車産業をはじめ、建産機・工作機械などの分野でもマイナス影響を受けています。鉄鋼業においても需要の回復遅れ、人口減少によって鋼材需要が縮小傾向にあるところに、中国をはじめ海外からの鋼材の流入も増加しており市況に大きく影響を及ぼしています。

そして何より、鉄鋼業全体は今、大きな転換期を迎えています。カーボンニュートラルへの対応の必要性が急速に高まっているのです。高炉各社は国内市場対応では設備能力の縮小や大型電気炉への再編といった課題に取り組んでいますが、当社は電気炉メーカーとして従来から培ったノウハウやスクラップの再利用でCO2発生量が少ないといったアドバンテージを活かし様々な戦略を進めているところです。言い換えれば、私たち電気炉メーカーには新たなチャンスが訪れているとも言えます。当社グループの主要需要分野である建築分野だけではなく、足元では、様々な分野、用途のお客様から当社へのニーズをお伺いしており、そのニーズにお応えするためにも電気炉製品の生産能力を拡充し、お客様のご要望にお応えしていこうと考えています。それが「中山製鋼所グループ2030長期ビジョン」の新電気炉工場建設・生産能力向上プロジェクトです。国内市場が縮小傾向にある中においても、カーボンニュートラルに貢献できる新たな製品群を開発・捕捉していくことで、当社グループのビジネスチャンスが大きく広がっていくと認識しています。

事業戦略

国内外の競合メーカーが真似できない製品ポートフォリオの確立を目指す

当社では、電気炉製品の生産能力増強の検討だけでなく、グループの収益最大化を目指した製品ポートフォリオの改革にも取り組んでいます。2022年には製品開発本部を発足させ、現在の製品群をベースにして付加価値の高い新製品の開発、あるいは、電気炉材の特性を活かした新たな需要分野の開拓を加速しています。電気炉材の特性を活かした成長が見込める市場に加えて特定のニッチな需要分野もターゲットにすることで、国内外のメーカーとの価格競争に巻き込まれずに当社グループの事業拡大を図ることができると考えています。

当社のメッキ製品は、耐食性、美観、溶接性、塗装密着性に優れ、主に建材用途に使用されています。このメッキ製品の耐食性をさらに向上させ、建材用途以外の分野にも展開できる製品の開発を進めています。またフォーミング製品では塗装技術に定評があるので、軽量C形鋼やパイプ製品での膜厚・防錆性に優れた製品の開発にも取り組んでいます。将来的にはフォーミング製品のサイズ拡大やさらなる付加価値向上、また三泉シヤーを中心とする鋼板加工の強化により、加工製品の比率を引き上げることを目標にしています。

棒鋼・線材製品においては豊富な品ぞろえにより、自動車・建材・建築等需要分野は多岐にわたっていますが、さらなる付加価値向上を図ることで用途拡大を目指します。目指すところは、全体最適の観点で生産販売品種を構成する製品ポートフォリオです。輸入製品・他社製品では供給できないラインアップを独自の技術で実現していきたいと考えています。

当社グループは長い歴史の中で、お客様目線に立った製品・サービスの提供を続け、お客様との深い信頼関係を築いてきました。直面する時代の大転換期に際し、お客様のカーボンニュートラルに貢献する高付加価値の製品をお届けするため自らの事業を大きく変革し、これから先も多くのメーカーの中から当社を真っ先に選んでもらえることを目指します。そして、そのような目標を社員とともに語り合うことで、皆がモチベーションを高く持ち、時代に合った新しい考えや仕組みも取り入れながら、100年続いてきた “中山らしさ”を継承し、次の100年に向けて全社員が一丸となってありたい姿を目指して進んでいきたいと思います。