価値創造ストーリー

財務責任者メッセージ

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専務取締役 中村 佐知大

グループの収益構造の改革を目指し、財務基盤強化を図るとともに、資本効率と株価を意識した経営に取り組んでいきます。

専務取締役

中村 佐知大

2023年度の主な財務活動と現在の課題

成長戦略によるキャッシュ・フロー創出力の改善を目指す

2023年度の設備投資総額は52億円となりました。主な投資内容は、C形鋼の成形ラインの集約工事、建物の耐震補強工事、製造設備の維持更新投資等です。設備投資以外では、旧高炉・コークス工場の遊休設備の解体撤去を進め、更地化がほぼ完了しました。この跡地には新電気炉工場の建設を考えています。このほか、東大阪市の賃貸駐車場、旧酸素工場跡地など、資産の売却も進めました。

これらの結果、営業活動によるキャッシュ・フローが52億円の収入、投資活動によるキャッシュ・フローが23億円の支出でフリー・キャッシュ・フローは29億円のプラスとなりました。財務活動によるキャッシュ・フローが31億円の支出でした。2024年3月末時点の現預金は165億円です。ネット有利子負債はマイナス69億円で、実質的な無借金を維持しており、足元の利益水準も安定し、資金需要も落ち着いているので、当社のキャッシュ・フローは中期経営計画比改善されているといえます。

しかしながら、当社グループにはビジネスモデルにおける構造的課題が存在します。キャッシュ・フロー創出力は競合他社に比べて弱い状況にあり、その主要因は鉄源構成です。自社の電気炉で製造する自家鉄源が約5割、残りの5割については高炉メーカー、電気炉メーカーからスラブ、ビレットなどの半製品を購入しています。この自家鉄源と購入鋼片の価格差が非常に大きく、全量を自家鉄源でつくっている他社に比べ、当社グループの収益力、資金創出力は低い水準にとどまっています。この大きな課題を解決すべく進めているのが、旧高炉・コークス工場跡地での電気炉工場新設プロジェクトです。これを推し進めることで、2030年までに電気炉材の生産能力を現在の約2倍に増やし、収益力を大幅に向上させたいと考えています。

財務戦略と資本配分

4つの考え方を基本に持続的成長重視のアロケーションを計画

当社グループでは、企業価値向上を目指した財務戦略を掲げています。①持続的な成長による収益性の向上と資本効率を重視した経営の実践、②持続的な成長を支える投資の実行と環境変化に耐え得る強固な財務基盤の維持、③株主還元の充実と将来の成長戦略への資金の確保、④株主、機関投資家の皆様とのコミュニケーションの促進と積極的な情報開示。これらが財務戦略の基本的な考え方となっています。
キャッシュ・アロケーションに関しては、中期経営計画期間で営業キャッシュ・フロー191億円、加えて資金調達115億円を想定し、これらを原資に設備投資および解体撤去に216億円、株主還元に49億円、借入金の返済に25億円、現預金の積み上げが16億円の配分を計画しています。営業キャッシュ・フロー191億円の中には増加運転資金77億円が含まれています。また、現預金の水準は月売上の1.1倍程度を目安に置いています。

設備投資および解体撤去の216億円は従来に比べかなりの高水準です。設備の維持更新と基盤投資、M&Aを含めた収益投資など、将来を見据えて計画的に増額しました。次期中期経営計画では既存設備の維持更新の投資負担を極力抑え、できるだけ成長投資、つまり電気炉工場新設プロジェクトに回していく考えです。

また、財務の健全性の目安としては2024年度にネットD/Eレシオ0.1倍程度としています。グループ全体でキャッシュ・マネジメント・システムを導入して資金管理の一元化を進めており、有利子負債を最小限に抑えたいと考えています。

資本効率と株価を意識した経営

企業価値向上策とともに、株式市場からの適正な評価獲得を目指す

PBRについては、2024年3月末で0.49倍と1倍を大きく下回っており、改善が大きな課題であると認識しています。PBR改善のためには、企業価値を向上させるとともに、株式市場で適正な評価を受けることが重要と考えています。

企業価値向上のためには、利益水準の向上と適切な株主還元により、株主資本コストを上回るROEの持続的な向上に努めていきます。株主資本コストは6%から8%の間で推移しており、ROEは2022年度11.0%、2023年度8.8%と、株主資本コストを上回っています。今後もROEの水準を維持、向上させるため、脱炭素化でニーズが増加している電気炉鋼材の適用拡大と、鋼材二次加工製品の拡充を主軸とする加工ビジネスの強化に取り組んでいきます。

電気炉鋼材の適用拡大については、電気炉鋼材の新たな用途開発のほか、自社電気炉での月間5万トンの生産体制の確立を目指すとともに、中部鋼鈑の新電気炉立ち上げ後の業務提携の拡充を図ります。また、加工ビジネスの強化については、C形鋼、縞鋼板など高いシェアを持っている収益性の高い製品、品目をさらに増やし、グループ全体最適の考え方で、“中山らしさ”を発揮した地域密着の販売戦略を展開していきます。さらに加工ビジネスの強化につながるM&Aや他社との提携もグループ全体で検討していきます。

株式市場での適正な評価という観点では、2024年3月末のPERは5.8倍と、大変低い水準となっています。中期経営計画がスタートする2022年に、将来の成長戦略の最重要施策である電気炉生産能力増強プロジェクトを主軸とする「中山製鋼所グループ2030長期ビジョン」を定めましたが、今後は投資計画とその効果を含め、株主・投資家の皆様に計画の実現性をより具体的に示していくことで、株式市場での適正な評価につなげていきたいと思っています。

株主還元の方針・ステークホルダーへのメッセージ

カーボンニュートラルという大きなビジネスチャンスを最大限に活かす

利益配分については、経営基盤と財務体質の強化、ならびに今後の事業展開に備えるために必要な内部留保を確保しつつ、安定した配当を実現していくことを基本方針としています。配当水準は、中期経営計画最終年度の目標である連結経常利益100億円を前提に、連結配当性向30%を目標としています。余剰資金については、電気炉工場新設プロジェクト等将来の収益力強化に向けた設備投資に有効に活かすことを優先したいと考えています。また次期中期経営計画では、長期ビジョン実現に向けた具体的な計画を踏まえ、株主還元方針についても改めて検討していきたいと考えています。

そして、私が株主、投資家の皆様にぜひご理解いただきたいのは、現在の世界的なカーボンニュートラルの潮流は、当社グループにとって大きなビジネスチャンスだということです。2002年に高炉を休止してから20年以上が経過しましたが、その間も電気炉材で高炉材に負けない品質の製品を供給し続けてきた自負があります。また電気炉の操業を90年近く行ってきた歴史があります。このアドバンテージをさらに大きく活かしていくため、電気炉工場新設計画を着々と進め、脱炭素化社会に貢献するとともに事業を大きく成長させ、業界のリーディングカンパニーを目指したいと思っています。