環境

TCFD提言に沿った取り組み

  1. TOP
  2. サステナビリティ活動 環境 TCFD提言に沿った取り組み

「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言に沿った取り組み

当社は2022年10月にTCFDの提言に賛同しました。
TCFDの提言を踏まえた取り組みは、カーボンニュートラル実現に向けて有効であるとともに、リスクと機会の発掘・対応による収益への寄与、ステークホルダーへの情報開示と対話の充実など、多岐に亘る効果が期待できる手法と確信しており、全社挙げての展開を推進していきます。

TCFD
TCFD推奨の開示項目対照表
基礎項目 開示推奨の11アイテム
ガバナンス 気候関連のリスクと機会に関する組織のガバナンス 気候関連のリスクと機会に関する取締役会の監督体制についての説明
気候関連のリスクと機会を評価・管理する上での経営者の役割についての説明
戦略 組織の事業・戦略・財務への影響 組織が特定した短期・中期・長期のリスクと機会についての説明
気候関連のリスクと機会が組織の事業・戦略・財務計画に及ぼす影響の説明
1.5°C〜2°C未満、4°Cシナリオにおける組織戦略の強靭性・対応力(レジリエンス)の説明
リスク管理 気候関連リスクの特定・評価・管理の状況 気候関連リスクを特定し評価するための組織のプロセスを説明
気候関連リスクを管理するための組織のプロセスを説明
気候関連リスクを評価・管理するプロセスが組織全体のリスク管理にどのように統合しているかを説明
指標と目標 気候関連リスクと機会の評価・管理に用いる指標と目標 組織が自らの戦略とリスク管理に則して、気候関連のリスクと機会の評価に使用する指標を記載
Scope1、Scope2、該当するScope3のGHG排出量を記載
気候関連のリスクと機会を管理するために組織が使用する目標、および目標に対する実績を記載

ガバナンス

気候変動・環境関連課題の管理・監督体制

当社は持続可能な成長と社会的課題の解決に向けたサステナビリティ経営の取り組みの推進と中長期的な企業価値向上のため、サステナビリティ委員会を設置のうえ、年4回以上開催しています。特に、気候変動問題は国際的課題として重要視しており、2030長期ビジョンの第一義として「カーボンニュートラルに向けて尽力する企業」を掲げ、その他環境関連課題とともに、当委員会において管理・監督する体制を構築しています。
また、その下部組織であるカーボンニュートラル推進委員会、環境マネジメント委員会がカーボンニュートラル実現に向けての方針設定、依存・影響・リスク・機会の特定を行い、その後、業務執行部門が検討、報告(年1回)するCO2排出量削減に向けての具体的な活動、環境目的・目標の設定などに対し、環境マネジメント委員会が承認・指示を行っています。両委員会は年3~4回の定期開催に加え、外部環境やモニター状況の変化など必要となった場合は臨時開催する等、臨機応変に対応しています。
これらの内容はそれぞれの委員会より適宜、サステナビリティ委員会に諮問のうえ、取締役会にて協議、最終承認・指示(年1回以上)されています。また、コーポレートガバナンス・コード、有価証券報告書に開示するとともに、統合報告書、ホームページなどでも掲載することで、ステークホルダーへの情報共有にも努めています。

サステナビリティ経営の全体像―気候変動に関するガバナンス体制―
サステナビリティ経営の全体像―気候変動に関するガバナンス体制―
気候変動・環境関連課題に関する各機関の役割
役割 メンバー構成
取締役会
  • 経営上、重要な影響を与える気候変動・環境関連課題への監督を行う対応に関する事項
議長:
社長
メンバー:
取締役
サステナビリティ委員会
  • サステナビリティ経営戦略の立案、評価、取組状況に関する事項の監督を行う
委員長:
社長
副委員長:
企画担当取締役&総合管理担当取締役
委員:
役員、本部長、部長
カーボンニュートラル推進委員会
  • カーボンニュートラル実現に向けた方針設定、実行サポートを行う
  • TCFD提言に沿った開示サポートを行う
  • GXリーグの対応を行う
責任者:
総合管理担当取締役
委員:
経営・営業・製造・総合管理 各 本部長・部長
環境マネジメント委員会
  • カーボンニュートラル等、リスク・機会の特定と環境目的・目標達成のための実行サポートを行う
  • 環境マネジメントシステム(EMS)への対応を行う
経営者:
総合管理担当取締役
委員:
全部門 本部長・部長

気候変動・環境関連課題を評価・管理する上での経営者の役割

当社の気候変動など環境関連問題への対応に中心的な役割を担うサステナビリティ委員会は代表取締役社長を委員長とし、カーボンニュートラル推進委員会および環境マネジメント委員会では製造、環境部門などを統括する取締役が推進責任者となり、気候関連、環境に関する課題の抽出と対策立案、モニタリングと確実な履行を評価・管理しています。

リスク管理

気候変動・環境関連のリスクマネジメント要領と依存・影響・リスク・機会を特定・評価するプロセス

気候変動および環境関連におけるリスクは、当社の事業経営、サステナビリティ経営に影響を及ぼすとの認識のもと、年3回の定期更新を行っており、そのマネジメントにあたっては以下の通り、PDCAサイクルを活用しています。
TCFDの提言を踏まえた取り組みは、カーボンニュートラル実現に向けて有効であるとともに、リスクと機会の発掘・対応による収益への寄与、ステークホルダーへの情報開示と対話の充実など、多岐にわたる効果が期待います。
計画段階(Plan)では、カーボンニュートラル推進委員、EMS管理責任者が国際情勢、国内における社会情勢、政府・自治体の動向、鉄鋼業界・他産業界の動向など様々な情報を参照し、当社における気候変動・環境関連への依存・影響を把握のうえ、リスクと機会を抽出しています。そのリスクを財務影響度、発生可能性、ステークホルダーにとっての重要性などを加味した上でカーボンニュートラル推進委員会、環境マネジメント委員会が特定・評価しています。
実行段階(Do)では、業務執行部門が前述の特定されたリスクを踏まえ、エネルギー原単位改善の目標と施策、および省エネ・CO2削減の設備投資計画を検討のうえ、経営計画・アクションプランに反映し、実行しています。
実績評価段階(Check)では、環境マネジメント委員会がアクションプラン実績のモニタリング、フォローとともにその達成度のレビュー、環境パフォーマンスの総合評価を実施しています。これらの結果については、環境マネジメントシステム(EMS)における外部機関、社内環境監査委員からの監査を受けることで評価するとともにステークホルダーとのコミュニケーション(開示文書など含む)の中で明示しています。
歯止め(Action)として、レビューおよびパフォーマンス評価の結果を踏まえた改善策を検討のうえ次期計画に反映しています。
これら一連の業務については、環境マネジメント委員会がサステナビリティ委員会、取締役会で報告(年1回以上)し、承認・指示を受けています。

気候変動・環境関連リスクマネジメント体制
気候変動・環境関連リスクマネジメント体制
依存・影響・リスク・機会を特定・評価するプロセス
依存・影響・リスク・機会を特定・評価するプロセス

戦略

シナリオ群の定義

シナリオの選択にあたっては、可能な限り温度帯や世界観が異なるシナリオを選択することで「想定外を無くす」ことを意識し、パリ協定で示されている「世界全体の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求する」ことを念頭に置きました。
そのうえで、国際エネルギー機関(IEA)や、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数のシナリオ(1.5℃〜2℃未満、および4℃)を参照のうえ、2030年、2050年時点における影響評価を行いました。

参照情報
  • IEA 「World Energy Outlook 2022 NZE,APS,STEPS」 「Energy Technology Perspectives 2020 SDS・IPCC : RCP2.6 , RCP8.5」等

当社グループにおける事業環境の変化

シナリオで設定した気候変動が当社の事業環境に与える影響をマクロ的観点から描写した上でリスクと機会を細分化しました。

1.5℃〜2℃未満シナリオ
脱炭素化ニーズが高まり、産・官・学・金・民による抜本的な対策が講じられる
1.5℃〜2℃未満シナリオ
4℃シナリオ
脱炭素化ニーズはなく、異常気象など物理的リスクによる激甚災害が頻発する
4℃シナリオ

リスク・機会の重要なアイテムとその財務影響度、発生時期、および対策

当社の中・長期的な気候変動への対応を全社の取り組み課題として、経営層を含む全従業員がその内容を認識・共有化のうえ取り組むべく、TCFD提言において推奨されるシナリオ分析を活用しました。
当社、およびバリューチェーンにおける気候関連リスクと機会を認識のうえ、シナリオとして選択した「1.5℃~2℃未満、および4℃」の2パターンにあてはめ、事業上の短期・中期・長期的な課題を検討しています。
特に重要度の高い内容について、下記のとおり推進していきます。

  • リスクへの対応
    • 炭素税、排出量取引などのカーボンプライシング導入に伴うコスト負担増加への対応、および脱炭素社会に向けての他産業における高炉製品に代わる新素材・新技術の開発による鋼材需要の減少への対応
      財務影響

      炭素税が2030年に$140、2050年に$250で導入され、対策を講じなかった場合、両年におけるCO2排出量を325千tと想定すると、そのコスト負担額はそれぞれ65億円、116億円になります(足元での地球温暖化対策税289円/t-CO2との差額にて算定、炭素税はIEA WEO2022NZE参照、為替144円/$)。
      また、他産業で高炉鋼材に代わる新素材・新技術の開発があった場合、当社の購入高炉鉄源を使用している製品(現状、全体の約5割)の販売数量が減少し、売上高、収益が減少する可能性があります。

      対策

      CO2削減に向け、現在購入している高炉鉄源を電気炉鉄源に置き換えるべく電気炉設備の生産能力増強のため、新電気炉建設を含めた検討を推進しています。その実現に向けては、持続的な安定収益の確保の実現、スクラップ調達確保策の検討などを推進していきます。また、既設工場設備では省エネルギーを推進し、加えて太陽光発電設備の導入検討など再エネ化も併行して対応しています。

    • サプライチェーンにおける脱炭素化への対応によるコスト増加分の原材料価格への転嫁に伴うコスト負担増加への対応
      財務影響

      ①同様、炭素税導入で調達先(高炉メーカー、電気炉メーカー)で対策が講じられなかった場合、購入鉄源の価格上昇により、コスト負担額が2030年で116億円、2050年で209億円の増加になるものと想定されます(前提条件は①同様)。

      対策

      省エネなど自社によるコスト削減とサプライチェーンへの省エネの働きかけとともに、サプライヤーとのエンゲージメントを継続的に実施のうえ、原材料価格変動に臨機応変に対応すべく、連携を強化します。長期的には新燃料の利用拡大、船舶の燃料転換などを推進していきます。

    • 気候変動関連対応ニーズへの対応不足による企業評価低下がもたらす株価の下落への対応
      対策

      TCFDに沿った開示を進めるとともに、株主様、機関投資家様などとのコミュニケーションを充実していきます。

    • 平均気温の上昇や海面上昇に伴う事業環境の変化への対応
      財務影響

      4℃シナリオにおける本社・船町工場での浸水は50cm~1m、営業停止日数13.5日と想定(WRI Aqueduct、および国交省2019.4策定「治水経済調査マニュアル」参照)され、その場合の売上高減少額は最大約53億円となります(2023年度の鋼材・建材製品売上高1,432億円)。

      対策

      自社における既存操業の維持が困難となり、拠点の移転、設備対応、物流ルート変更に対するコストの増加が想定される場合、およびサプライチェーンにおいて供給体制が不安定となることを想定した場合への対応として、原材料調達先の多様化、およびBCP(事業継続計画)の実行によるスムーズな復旧を推進します。また、体制固めとして、BCM(事業継続マネジメント)体制を構築することで、鋼材販売遅延の極小化を推進すべく、設備・施設強化、鉄鋼メーカーとの業務連携による融通制度構築などを進めていきます。

  • 機会への対応
    • 脱炭素意識の高まりに伴う消費者意識の変化への対応
      財務影響

      建築業界、建設業界など、当社主要販売先である多彩な職種の・多くの企業から引き合いが増えるものと想定した場合、約34億円の売上げの増加が期待できます。

      対策

      CO2排出量の低い鋼材ニーズの高まりに伴う電気炉製品販売量の増加への対応として、①の電気炉生産能力向上対策の実施に加え、販売戦略として脱炭素・循環型鋼材であることのPRなどを行っていきます。

気候変動関連のリスクと機会、およびその対策
気候変動関連のリスクと機会、およびその対策
  1. 重要度:財務影響度、発生可能性、ステークホルダーにとっての重要性などを加味して設定
    (財務影響度=売上高、コスト影響につき 高:50億円以上、中:10億円以上50億円未満、低:10億円未満)
  2. 発生時期 短期:0~3年、中期:3~10年、長期:10~30年

指標と目標

バリューチェーン全体におけるCO2排出量削減実績と目標

当社では、2050年カーボンニュートラルに向けてバリューチェーン全体での排出量削減が重要であると認識しており、また、自社における直接・間接排出量(Scope1,2)よりもサプライチェーンの排出量(Scope3)が多いことから、Scope3を含めた2030年目標値※1として2013年度比46%削減、2050年カーボンニュートラルを掲げています。
当社グループにおけるScope1、2、3排出量は2023年度実績で1,633千t-CO2となり、そのうち、自社の活動からの排出量(Scope1、2)は298千t-CO2で全体の2割弱となっています(2023年度からグループ全社を算定)。
2023年度が前年度から大幅に増加したのは、Scope2で電力会社の排出原単位が東海・関西・九州地区で1.2~1.4倍となったことによるもので、電気使用量は減少しています。また、Scope3では、電気炉にてトラブルが発生したことで、スラブ購入量が増加したため、CO2排出量も増加しました。

  1. 当社における温室効果ガスは、CO2がほぼ 廃熱回収発電設備の導入などを推進していきます。全量であり、その他のガスは極めて少量であることからCO2に絞り算定しました。
  2. CO2排出量は当社・全工場、エンジニアリング事業、およびグループ会社5社におけるScope1、2とScope3を示しています(2023年度からグループ会社を追加)。
  3. CO2排出量算定にあたり電力会社からの供給電力は調整後係数を適用、排出原単位は「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベースver.3.4」を適用しました。
CO2排出量(Scope1,2,3)の推移
CO2排出量(Scope1,2,3)の推移
Scope3排出量
カテゴリー 対象 CO2排出量(t-CO2 2023年度
比率
2013年度 2022年度 2023年度
1 購入した製品・サービス 購入鉄源・コイル、合金鉄、副原料、資材など(採掘、製造) 1,500,803 868,034 1,067,694 80.0%
2 資本財 設備投資 5,128 11,237 17,620 1.3%
3 燃料・エネルギー活動 購入燃料・電力(採掘、精製) 55,906 55,361 52,657 3.9%
4 輸送、配送(上流) 調達物流、出荷輸送 72,732 63,678 56,179 4.2%
5 事業から出る廃棄物 廃棄物(処理、輸送) 617 945 935 0.1%
6 出張 従業員の出張 207 217 170 0.0%
7 雇用者の通勤 従業員の通勤 357 380 349 0.0%
10 販売した製品の加工 客先での製品加工 74,144 86,998 70,791 5.3%
12 販売した製品の廃棄 客先での製品梱包材の廃棄物 54 56 53 0.0%
15 投資 株式投資先 113,724 67,817 67,830 5.1%
合計 1,823,673 1,154,723 1,334,371 100%

※カテゴリ8,9,11,13,14は該当なし

Scope3 2023年度排出量

独立した第三者保証

当社は、2023年度のScope1、Scope2、およびScope3・カテゴリー1の算定結果につき、日本検査キューエイ株式会社による第三者検証を実施のうえ、独立した第三者保証報告書を取得しました 。

独立した第三者保証報告書

2050年カーボンニュートラルに向けてのロードマップ

当社では2050年カーボンニュートラルに向けての取り組みを事業拡大のチャンスと捉え、CO2排出量が高炉製品の1/4である電気炉製品の生産比率を飛躍的に向上のうえ、Scope3の排出量を大幅に削減していきます。また、省エネ設備、熱延直送圧延、太陽光発電などの導入を進め、2030年には2013年比46%以上のCO2排出量削減を目指します。
さらに2050年カーボンニュートラルに向けては、さらなる燃料・電力原単位の削減のための新設備技術、新燃料などの生産設備・船舶などへの適用、再エネ設備、廃熱回収発電設備の導入などを推進していきます。

2050年カーボンニュートラルに向けてのロードマップ

その他の活動

当社は、気候変動への対応として、TCFD関連業務以外にも、以下諸団体での活動に積極的に参加しています。

経済産業省「GXリーグ」へ参画

当社は経済産業省が主導する「GXリーグ」に2022年3月に賛同を表明のうえ、2023年5月に参画しました。GXリーグでは2050年カーボンニュートラルの実現に向け、GHG排出量削減目標設定、移行戦略などの開示を求めたうえでGXリーグ公式サイト上のGXダッシュボードにて開示しており、当社も対応しています。

GXリーグ

CDPからの質問へ回答

当社はCDPに参加する700を超えるキャピタルマーケッツ署名機関からCDP質問への回答要請を受けており、2024年10月に回答しました。CDPからの質問は気候変動、および水セキュリティ、森林に関するものですが、当社は特に関連性の高い気候変動について回答しました。その結果は、スコアリングのうえ、公表される予定です。

CDP