事業戦略 メッセージ
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2033長期計画における成長戦略
生産体制の重要課題に着目し、新電気炉建設を決行、2031年から収益への貢献を目指す
「中山製鋼所グループ2033長期計画」では、「新電気炉プロジェクトを基軸とした新たな成長ステージへ」をスローガンに掲げ、国内の電気炉薄厚板で確固たる存在感を確立すること、そして、循環型社会の中でユーザーニーズに応じた中山らしさを追求することを具体的な目標としています。言い換えれば、これらの目標を達成するための大きな柱が新電気炉プロジェクトとなります。
当社は2002年に高炉・転炉を休止し、その後は電気炉で鋼片を生産してきましたが、この生産体制には二つの大きな課題がありました。受注量に対して鋼片の生産量が足りず、不足分の鋼片は外部調達に頼らざるを得ないことと、連続鋳造機の幅に制約があり、広幅スラブが製造できないことです。これらを解決するため、設備の更新、拡張を考えてきましたが、1991年に増強した電気炉は、その建屋は築60年で老朽化が著しく、基礎も弱いため、炉容積を増やすことができません。また、生産を続けながら拡張工事はできないので、別の場所に新電気炉をつくるしかありません。長らく検討を行った末、かつて高炉・コークス工場のあった場所が遊休地になっており、圧延工場にも隣接しているため、そこに新たな電気炉を建設することを決定しました。新電気炉の生産能力は長期的な販売戦略を考慮し、年間約120万トンの生産ができる200トン炉としました。
新電気炉建設の効果は主に3つあります。まず、コスト面で、外部調達から自社生産の鉄源に切り替えることで調達コストが大幅に下がります。次に、Scope3を含めた温室効果ガスの削減効果です。電気炉鋼片は高炉鋼片の約4分の1のCO2排出でつくることができます。また、新電気炉の設備は、スクラップを連続的に投入し予熱する方式を採用することで、消費電力が大幅に低減され、新電気炉で生産した鋼片は、製品を購入するお客様のCO2削減にも寄与し、カーボンニュートラルの実現に大きく貢献します。3つ目は、広幅スラブが自社生産できるので、より多様な産業のお客様に当社グループの高品質、高付加価値の製品を供給できるようになります。
建設スケジュールとしては、環境アセスメントが2026年8月に終了する見込みで、その後、建設予定地に残った建屋の解体などの準備工事を行います。そして、2026年のできるだけ早い段階に着工し、2030年の完工を目指します。早期の安定操業を目指し、2031年から収益貢献が始まるとの見通しを立てています。
新生中山製鋼所への道のり
カーボンニュートラル実現と製品ポートフォリオ改革、次の100年も続く新しい中山へ
新電気炉プロジェクトを基軸に、当社ではカーボンニュートラル戦略と製品戦略を描いています。長期ビジョンとして「2030年までにCO2排出量46%削減(2013年度比)、2050年カーボンニュートラル」という目標を発表していますが、この目標も新電気炉工場が達成の要となっています。当社は売上、収益を大きく伸ばしながら、CO2排出量を大幅に削減していきます。新電気炉工場は、太陽光発電装置を導入したPPAやグリーン電力の調達、燃料転換なども計画に加えており、カーボンニュートラルを確実に加速させたいと考えています。
製品戦略では、電気炉材の適用拡大と、グループ一体での加工分野の強化に取り組んでいきます。現在の製品構成は、建材を含めたフラット製品が約8割、棒線製品が約2割の構成で、そのうち約半分は当社グループで加工まで施した製品を出荷しています。利益率が高い自社加工製品を、さらに伸ばしていくことが第一の戦略です。特に、市場トップシェアのC形鋼などの建材製品は、新製品を市場に投入し、収益力を高めていこうと考えています。また、2024年に船町の当社構内に本社事務所を移転した三泉シヤーは、新工場を建設しており、主に縞板、厚板製品の加工を強化していきます。
2030年までの基盤強化
営業力強化と電気炉材の適用拡大、北関東圏への進出成長の基盤づくりを加速
長期計画では、2033年度までの9カ年を3つのフェーズに分けて計画を策定しました。2025年度にスタートした中期経営計画はその第1フェーズにあたり、将来の成長を確実にするための基盤固めと位置づけ、まず、営業力強化と電気炉材の適用拡大に取り組んでいきます。当社は2020年に、各部に分散していた技術者を集め、鋼板製品開発室を発足しました。そこで新製品、売れる製品を検討していく中で、営業メンバーも合流させ、2022年に製品開発本部を設置しました。同年に中山三星建材を合弁し、建材事業本部を立ち上げ、建材向けも含めた新しい鋼板製品の開発を本格化してきました。並行して、お客様に対してはカーボンニュートラルを切り口に電気炉鋼材を提案する営業を強化しています。また、家電メーカーのお客様もCO2削減に積極的なため、従来、高炉材でつくっていたものを電気炉材に置き換える提案を行っており、一部の製品は評価段階まで進んでいます。
次に北関東への商圏拡大です。当社は関西圏を中心としてきましたが、2030年に向けて販売を増やしていくため、関東や東北にも利便性が高い茨城県常陸那珂地区に、2025年12月、中継地を開設する予定です。競合の多い京浜地区に比べて、常陸那珂港付近は鋼材を取り扱う倉庫も少なく、当社が優位に立てるチャンスがあると見ています。また、BCP(事業継続計画)の観点でも中継地は有効に機能するはずです。
そして、生産能力が2倍近くなると、鉄スクラップも現状の2倍近く必要になることから、調達の準備を進めています。かつては大量のスクラップを調達していたので、地元を中心に増やそうとしていますが、長期的視点から関西圏以外からの調達が必要と考え、サテライトヤードとして清水工場のヤード拡張、名古屋工場への新規開設を計画しています。すでに地場のスクラップメーカーと協力し、集荷テストが順調に進んでいますが、複数の大手高炉メーカーが2030年前後の電気炉開設を発表していることから、国内のスクラップ需要は高まると見ており、当社も準備を万全にしたいと思います。
自社生産の鉄源だけで製品づくりを行うことは、私たちにとって長年の夢でした。そして、夢を実現させる決心をしたのは、もっとサステナブルな鉄鋼業を実現しなければ、若い人たちがこの業界に明るい未来の姿を感じてもらえないと懸念したからです。当社の技術者たちは、循環型社会に役立つ鋼材の研究開発に大きなやりがいを感じて取り組んでいます。これからもそういう人を増やしていかなければなりません。私たちの示した方向性は社会の大きな方向性とも合致していますので、必ず実現していきたいと思っています。