社外取締役座談会
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村上 早百合 社外取締役
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02

中務 正裕 社外取締役
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03

角田 昌也 社外取締役(監査等委員)
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津田 和義 社外取締役(監査等委員)
2024年度は新電気炉への投資を
徹底的に議論

津田
新電気炉の建設は、当社の規模からしても非常に大きな投資を伴うプロジェクトです。あえてリスクを取ってチャレンジする姿勢は良いと思いますが、姿勢だけでは成果が出せませんから、ほかの選択肢は本当にないのかということも含めて、議論に相当の時間を費やしました。

角田
今ある電気炉の生産量では販売する鋼材すべてを賄うことができず、外部からの仕入れが必要です。新電気炉を自らつくることによって事業上の課題を解決し、収益力も上がり、カーボンニュートラルにも貢献できるのですから、議論の末、やるべきだとなりました。

中務
最終的に950億円程度と試算しましたが、相当大きな金額であり、財務の健全性についての議論も重要でした。借り入れも増えますし、日本製鉄株式会社との合弁企業の設立も決まりました。鉄鋼業は市況によって価格変動のリスクが大きいため、それだけの大型投資を行って将来の収益が見込めるのか、どの程度のリスクがあるのかを指摘し、社外役員として懸念事項を漏れなく見ていきました。また、合弁会社のパートナーは日本製鉄株式会社という日本最大の鉄鋼企業ですので、当社がいかに独立性を発揮し、意思決定力を発揮していくかという議論も行いました。

村上
財務面、リスク面などあらゆる観点から議論をしていく中で、今回の投資がやはり必要だという共通認識がしっかりと持てました。私は、カーボンニュートラルに先進的に取り組んでいくのですから、外部にもっと積極的にアピールし、投資家の皆様の理解を得ていくべきだと意見を述べました。
役員指名のプロセスを経て社長交代、
新経営体制へ移行

中務
報酬・指名諮問委員会では、当該年度の担当取締役の業績貢献に関する自己分析と、それに対する社長の評価を含めて点数化し、当初の目標を達成したかを評価するというプロセスを設けています。また、役員指名に関しては経営陣から提案が出されることを基本としています。このたびの社長交代については、箱守社長からそろそろ交代の時期だというお話がありました。

村上
新電気炉プロジェクトは始まったばかりですので、中心になって計画を進めてきた箱守社長が、まったく引いてしまわれるのはどうか、という議論がありました。その結果、経営執行は内藤新社長、プロジェクトは引き続き、会長、社長2人体制で推進していくことで同意しました。

津田
報酬・指名諮問委員のお二人から説明を受けて、指名のプロセス、手順をしっかりと踏んでいることを確認しました。また、当社は再生の期間を経て徐々に健康体になり、いよいよ本格的に打って出るというタイミングなので、箱守会長がプロジェクトの立案をやり切り、実行の段階でトップを交代するという考えは良いと思いました。

角田
内藤社長は、営業だけでなく、仕入れ、調達にも人脈を持っている方なので、事業拡大の旗振りとしては最適なトップだと判断しています。

中務
内藤社長は非常に明るくて、フットワークが軽いので、その持ち味を活かしてほしいです。せっかくの社長交代なので、何か目に見える形で会社の改革をしてはどうかという話をしました。例えば、女性社員の制服を廃止してはどうかと。

村上
とてもいい案です。ちょうど2024年度から、女性活躍の推進に向けた社員アンケートや社員の交流会などをスタートし、取り組みがより具体的になってきたところです。同調圧力や補助的業務のイメージが強い制服も見直し、女性にも管理職を目指してもらえる風土をつくっていきたいですね。
委任型執行役員制度による
ガバナンスの強化

中務
2025年6月より委任型執行役員制度を導入しました。主たる目的は執行と経営の分離で、取締役会は経営の基本方針と業務執行の監督の役目をしっかり果たし、執行役員はよりスピード感を持って業務を執行していけるようにとの考えです。取締役の人数が多くなり過ぎれば意思決定が遅くなるので、事業の専門性を持った方には執行役員になってもらい、執行役員と取締役の待遇面は大きく変わらない仕組みにしていきます。

角田
新電気炉が完成するまでの5年間は、外部の事業環境が厳しい中で収益をしっかりと確保していかねばならない大事な時期ですから、執行の皆さんにより業務に専念してもらい、実績で応えていただくことを重要視した制度改革です。

村上
最近は人的資本経営の流れにおいても、委任型執行役員制度の導入が増えていると聞きます。

津田
社員の皆さんのキャリアパスが変化し、高い目標設定やモチベーション向上にもつながりますから、人的資本の力をより高めることにつながっていけばよいと思います。
引き続きグループガバナンスを強化し、
成長と拡大を目指す

津田
ガバナンスは品質管理と同様で絶対値が高いことも大事ですが、それ以上に、グループで一定の水準が保たれていることが重要です。グループガバナンスのレベル統一に、現在課題として取り組んでいます。また、その一方で、業種業態が異なる会社がグループになっていますから、制度運用まですべて統一してしまうと食い違いが生じる点もあります。各社の風土や文化を尊重しながらコミュニケーションを取ってガバナンスを強化しており、今のところ順調に進捗しています。

角田
監査等委員には、内部監査の在り方に善管注意義務がありますので、ガバナンスの強化は継続的なテーマです。2024年に監査室を内部監査部として人員も補充するなど、より独立した監査を行う、いわゆる3ラインモデルを目指し、体制を充実させてきました。また、サステナビリティ委員会をはじめ、コンプライアンス・リスクマネジメント、品質マネジメント、環境マネジメントなど各委員会の活動が活発に行われ、取締役会にも報告が上がるため、議論がより闊達に行われるようになりました。

中務
監査のチェックリストには、コンプライアンスなどあらゆる分野で100項目以上あります。それぞれの項目にとても丁寧に監査対応をしていただいており、グループ全社の緊張感を持った事業運営につながっていると感じます。

津田
鉄は社会経済にとって不可欠なもので、世界の市場を見ても重要性は変わりませんが、産業構造がかなり変化しており、鉄の新しい需要も生まれています。そのような環境の中で、当社は独自の市場を築いており、グループの経営をレベルアップしながら目標を達成し、株主、投資家の皆様にも評価していただきたいと思います。

中務
株主の皆様の観点からすれば、まず脱炭素社会におけるグリーン調達ニーズに応えることで事業が拡大できる、そして日本製鉄株式会社との協業による安定的な需要確保が見込める点が大事です。中長期的に見て、資本市場での当社の評価は上がっていくと思います。

村上
非常に真面目で規律を守る会社で技術力も高いのですが、アピールする部分が弱いように感じます。今後の成長には男性、女性、外国人など多様で優秀な人材が必要ですから、ぜひ、会社の魅力を伝える広報やステークホルダーとのコミュニケーションを充実させてもらいたいですね。