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微細結晶粒金属材料の研究開発動向 ―次世代高強度材料を目指して― 
2002年7月31日

科学技術動向 2002年7月号
(文部科学省 科学技術政策研究所 科学技術動向研究センター) より抜粋

材料・製造技術ユニット 玉生 良孝
客員研究官 緒形 俊夫

省エネルギー、省資源等、地球環境保全の観点から材料にも軽量・高強度化やリサイクル性が求められている。材料 の強度や寿命を向上させることにより、例えば自動車の軽量化による燃費向上で日本全体のCO2排出量を2〜3%削減できるとする試算もある。

近年基礎的な研究により、材料の結晶粒径を微細化することで、強度、靭性、耐食性等が大きく向上することが確認された。我が国では超鉄鋼材料プロジェクトやスーパーメタルプロジェクトにおいて、特殊な合金元素を添加せずリサイクル性に優れた単純成分系の材料に大歪加工を施すことにより、従来は結晶粒径10〜15μmであった金属組織を結晶粒径1μm以下まで超微細化し、鉄鋼材料の強度を従来材料の約2倍に向上させる技術開発を行ってきた。プロジェクトも第2期を迎え今後は実用化を強く意識した開発が行われる見込みである。

一方(株)中山製鋼所では独自の技術開発により2001年11月に結晶粒径が2〜5μmで強度が1.5〜1.6倍の微細粒熱延鋼板(NFG)を開発し、世界に先駆けて微細粒鋼の生産・販売を開始した。NFGの動向は、将来の超微細粒鋼の実用化を予測する上で重要な試金石となるものと思われる。

微細粒鋼開発は日本が世界のフロントランナーとなっている分野である。今後も鉄鋼を始めとする金属産業が国際競争力を維持し続けるためには、産学官の密接な連携により諸外国に先駆けて高機能材料を開発、実用化し、高付加価値製品による技術の差別化を行う必要があり、これらのプロジェクトに期待される役割は非常に大きい。

微細粒鋼の実用化
2001年11月1日に株式会社中山製鋼所が微細粒熱延鋼板を世界で初めて工業的に製造可能にし、軽量・高強度鋼板の生産・販売を本格展開するとのニュースリリースを行った。この微細粒熱延鋼板は、(株)中山製鋼所が川崎重工業(株)と共同で開発した独自技術による高圧下圧延と強冷却を連続的に繰り返すことで製造される。具体的には、連続仕上圧延機6台のうち後段3台の圧延機で板厚を半分未満にする大圧下を行うと同時に、圧延機間に設置されたカーテンウォール冷却装置で強冷却(冷却速度40℃/秒)を行うことを特徴とする。図表1に中山製鋼所の微細粒熱延鋼板開発の概要を、図表2にその製造工程の概略図を示す。

【図表1】微細粒熱延鋼板の概要

製品名

開発経緯

実施機関

開発の概要

微細粒熱延鋼板NFG
(Nakayama Fine Grain)

1996年熱延工場建設計画

(株)中山製鋼所
川崎重工業(株)

結晶粒径が従来材の1/3以下であり2〜5μmで引張り強さ500〜600MPa級の熱延鋼板を開発

2000年1月ホットライン開始

2000年8月営業運転

2001年1月微細粒熱延鋼板の開発に本格的に着手

2001年10月引張り強さ500〜600MPa級の開発を完了

2001年11月1日ニュースリリース

2001年12月生産・販売開始


【図表2】微細粒熱延鋼板製造工程の概略図

画像をクリックすると拡大画像を表示します。


この鋼板は、結晶粒径が従来材の1/3以下の2〜5μm(従来鋼材は10〜15μm)と微細であり、引張り強さ500〜600 MPa級と従来鋼材の最大1.5〜1.6倍の強度上昇を達成した。微細粒化による強度上昇の結果、従来の熱延鋼板と比べSi,Mnの成分量を約半分にできた。さらに従来の熱延鋼板と比べ、高靭性、加工性にも優れ、また溶接性も良く、そのうえ高い疲労特性も備えるという特長を有している。現時点での強度はSTX-21やスーパーメタル(鉄系)が目指す800〜900MPaには及ばないものの国家プロジェクトよりも一足早く現実的な解として粒径数ミクロンの微細粒鋼の実用化、量産化に先鞭をつけたことは高く評価されよう。

本材料の製造技術は片駆動異径ロール圧延機による高圧下圧延技術やカーテンウォール冷却装置による強冷却技術を巧みに組合せており業界の注目を集めた。産業機械や建設機械、自動車メーカーなどからサンプル出荷の引き合いがあり期待度が大きいことが伺われる。現状では製造可能サイズがおよそ厚さ1.6〜16mm×板幅600〜1219mmと限られているが、今後はより一層の用途拡大のために更なる強度上昇とともに大型サイズへの対応も注目される。

【用語説明】
・片駆動異径ロール圧延機
仕上圧延機後段の3台のスタンドについて、 通常、上・下ロール(同径ロール)を駆動し圧延するが、本方式では片側をロール駆動し、しかも上・下ロール径を違えている。

・カーテンウォール冷却装置
仕上圧延機後段の3台のスタンドの出側に取り付けられた圧延材を冷却するための装置で、この冷却装置から出てくる水は、水厚24mm以上。あたかも水の壁のような状態(層流状態)になる。これにより高い冷却能力が達成できる。

以上

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